第三次企画書コンペの帰着 #ゆるノン日記3-4週目
はじめに
鹿が枯れた熊笹を食べている横,野生のアイススケート場を滑り靴底を擦り減らす今日この頃,皆様いかがお過ごしだろうか.前回の更新からずいぶん時間が経ってしまった.というのも,レポートにテストと学生の本分のほうがずいぶん喧しい時期なのだ.
ところで,前回話していた第三次企画書投票が終了した.ようやく決まった,という安心もあるが,それ以上に企画書を決めるのに一か月以上を費やしたことには呆れるばかりである.
今回の挑戦者たち
Ninth Soul,Wired Planet
前回に引き続いて参戦する私の企画書だ.特に中身は変わっていないので,中身が気になる人は2025-11-28のゆるノン日記を参照してほしい.
Armonica
前回の投票では(名称未定)となっていた9rammeの企画書が生まれ変わって参戦.生まれ変わった経緯は2025-12-5分のブログに書いてあるので,こちらも興味がある方はぜひ読んでいただきたい.
このゲームのコアは「音ゲー×コマンドバトル」,敵から流れてくるノーツを弾ければ敵へのダメージ,ノーツを弾けなければ自分へのダメージだ.ここには敵を多く選択すればするほど同時に攻撃できる敵の数が増えるが,代わりに同時に流れてくるノーツの数が増えるので難しくなる……というリスクとリターンの関係が成立している.
舞台はかつて思い出が音楽の形を取って満ちていた世界,アルモニカ.しかしある日,アルモニカの都市が突然地下に沈み込んでしまった.大穴の中はノイズで満ち,楽器の形を取るアルモニカの住人を狂わせる.
はじめは何ともなかったはずの地上にも徐々にノイズが広がり,立ち入り禁止区域は広がるばかりだ.仮説によれば大穴の底にはノイズの発生源が存在し,それを破壊することでノイズの浸食を食い止めることができるという…
大穴にはアルモニカの復興委員会がつり下げ式のエレベーターを設置してるが,アルモニカの住人はノイズの中にいると発狂し,見たものすべてを襲うようになってしまうため,アルモニカへと召喚された主人公を除きだれも立ち入ることができなかった.
バトルは大穴の階層ごとに発狂したアルモニカの住人が立ち塞がる。調律師である主人公の力で彼らをデノイズし、元に戻してあげよう.大穴の底には複数のアルモニカの住人が融合したオーケストラリアンがノイズの発生源と一体化している.いわゆるラスボスだ.これをデノイズしてゲームクリア,めでたしめでたしとなる.
前回から変わったところとして,まずストーリーラインが明瞭になったこと,ストーリーがエレベーターの中で完結するため歩き回るシステムを作らなくてもよくなったこと,なにより最大の変更点として,カードゲームというルールを廃止したことがある.
ただ,いま改めて見てみると曲や譜面の量産コストがけっこう高い.アセットの量産コストはかなり気をつけていたが,次年度はこういった量産コストにも気をくばらなければ.
Heliomeli
こちらも私の企画書である.内容は「破壊可能なダンジョン攻略系Minecraft」とでもいったようなもので,炭鉱夫である主人公がブロックベースの自動生成ダンジョンを破壊しながら姑息な手を使って自分より格上の敵を倒すというコンセプトだ.ブロックは延焼もするし,崩落もする.創ることの楽しさを重視するMinecraftではできない連鎖的な破壊メカニズムがプレイヤーに遊んでいる間の気持ちよさをもたらす,というわけだ.
舞台となるのは太陽のように光る粘性のある液体,ヘリオメリが満ちる古代ギリシア風の地下都市.ここにはヘリオメリが変異させた人間や生物がひしめき合っている.白い石を切り出したパノプティコンのような構造,植物園,オリーブ畑などはここに滅びが訪れたときのまま.
敵のビジュアルコンセプトはシュルレアリスム風にして…というように,考えている間は楽しかったのだが,今見てみるといまいちゲームシステムとの相性がよくない.変に意外性を求めず,単純に洞窟でもよかったかもしれない.
Isolated System
またこちらも私の企画書である.内容は「AIがキーパーをやってくれるBackrooms TRPG」.アルゴリズムによってのみ変更されるグローバルの箱,場所ごとの文脈を保存する,種のみをアルゴリズムで生成するローカルの箱,プレイヤの作ったプレイヤーに”意味的状態異常”を文脈として付加し,各ローカルの箱で受けた状態を保存するセルフの箱に情報を分割することによってAIがトークンの食べ過ぎでアホになることを避けられるのではないか?というコンセプトがあり,半分それの検証用として作ったのがこのゲームシステムだ.
プレイヤーは左,前,右の1~3叉路に立っている調査員くんにそれぞれの道から聞こえてくる音や気配を報告させると,LLMがそれぞれの道の先のローカルの箱の種であるエンティティ危険度,環境危険度などのパラメータから調査員くんのロールプレイをしながら返答してくれる.この応答は矛盾が起こらないよう,それぞれの箱に種として追加されることになる.どの道に進むかを決定するとLLMが種から具体的な描写を生成,前に居たローカルの箱は破棄される…といったような感じだ.
リスクとリターン関係が成立しているのは,まず危険な場所には有用なアイテムがある可能性が高いという点,次に,「後ろに戻る」という選択肢である.そう,「前に居たローカルの箱は破棄される」というルールがあるので,後ろに何があるのかは完全に未知なのだ.そして調査員くんもドク(プレイヤーは調査員くんからこう呼ばれる)も後ろのことは知りえない.つまり,プレイヤーは常に「程度が知れている前の危険に進むか,まったく未知の後ろが前より後ろよりもマシであることを祈って後ろに飛び込むか」という選択を迫られるのである.
この企画書の何が嬉しいかというと,まず絵を一枚も描かなくていい.そう,なんとこのゲーム,Zorkライクなのだ.そうするというと,Rustで書ける.Haskellでだって書ける!おそらく,ここにある企画書の中だと一番簡単に作れるゲームであると思う.というのも,xe-nonチームには美術担当が1人もいないのである!
You gonna be Mekanic
さてさて,こちらもまた私の企画書である.そろそろ飽きてきただろうか?私は断言する,この企画書はここにある中で最もアホな企画書であると!コンセプトは「カニ軍団をプログラミングしてデスマッチさせる対戦型Scratch」だ,
まずはカニの両手をチェーンソー,ハンマー,マシンガンなどのより殺意と鉄分の高いものに換装する.次にC(rustacean)言語で動きを記述し,ステージ中央のやまなしを相手側ゴールへ押し込む「やまなしモード」,カニがリスポーンせず,相手を先に殲滅させた方の勝ちとなる「修羅モード」などで相手のアルゴリズムと自分のアルゴリズム,どちらが強いか戦わせてみよう.
主な要素としては他のプレイヤーが同じルールで作ったプログラムをサーバーが持ってきてくれる対戦モード,C(rustacean)言語でのカニミソ指向プログラミングを練習できる,ザリガニ軍団と死闘を繰り広げるストーリーモードがある.なんといってもこの企画書,ほぼ絵を描かなくてもいい.コアシステムに必要なのはステージ背景,カニ,ザリガニくらい.ストーリーモードの立ち絵は妹に外注するとして,たいていの要素は図鑑をなぞって色を付けるだけで完成だ.
Scrap Alchemy
9rammeが書いてくれた,久しぶりに私の企画書ではない企画書だ.舞台は廃棄処分場,ロボットである主人公は「破壊された自機」が生成する熱・電気・重量属性のブロックが周りの環境に与える影響を利用して処分場の脱出を目指す,という非常にシンプルなゲームシステム.
たとえば,電気トラップで死んだときに生成される電気属性の死体は水場全体にダメージを与えるようになったり,熱属性の死体で氷を溶かして進んだりというような遊びが生まれるという.「よりパズル要素の強い,死自体をシステムに組み込んだNoita」のようなゲーム性だ.
やはりこれもビジュアルはシンプルで,ビジュアルは視認性を最優先したミニマルな幾何学デザイン.火属性なら赤、電気属性なら青、重量属性なら緑と,どことどこで,どんな反応が起こるかが色でわかるような作りなのだそうだ.幾何学デザインならエンジニアでも作れるという判断だろう.切実に絵描きが欲しい.
ろくごす
こちらはnekonomuraが書いてくれた企画書で,コンセプトは「漢文すごろく」,とんでもなくシンプルだ.
基本ルールは普通のすごろくと同じなのだが,プレイヤーは「レ点カード」「挟み込みカード(一二・上下・天人・甲丙)」「返り点抹消カード」「返り点回収カード」を使い効果の順番を入れ替えることができる.ビジュアルは和紙風で,ヒトどころか生き物1つ描かなくてもいいエンジニアに優しい仕様.
この企画書の何が嬉しいかというと,スコープが恐ろしく小さく,コンセントがとんでもなく鋭い.ここにある中では費用対効果が最も高い企画書なのではないだろうか.
投票結果
さてさて,肝心の投票結果だが,「Armonica 0票」「Heliomeli 1票」「Isolated System 0票」「Ninth Soul 4票」「Wired Planet 1票」「You gonna be Mekanic 1票」「Scrap Alchemy 1票」「ろくごす 1票」…2進数かな?0票|1票が多いのもそうだし,なによりどれも2のべき乗だ.企画書の量が多いので投票数が多い3つを選んで2次投票をする予定だったのだが,あまりにもNinth Soulがぶっちぎりだったので,2次投票を飛ばして今期の企画書はめでたくNinth Soulに決まることとなった.長かった….
まとめ
ようやっと手を付ける企画書が決めることができたので,遅れを取り返す意味でも今年中にプレイヤーのGUIを伴わない操作を作ってしまいたい.おそらく私は除夜の鐘がなっている間もパソコンに向かい合っているだろう.社畜予備軍たる高専生に休みなどないのだ.