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ゲーム企画書が決まらない話 #ゆるノン日記1週目

キノコフ
2025-11-28

はじめに

いよいよ秋も過ぎ去り,部屋が冷えているが絶妙にみかんは冷蔵庫に保管しないといけない今日この頃,みなさまはいかがお過ごしだろうか.今回は企画書の話である.
11月,なんやかんや何も出さずにゲームクリエイター甲子園が終了してしまった.というのも,去年は活動があまりにも行き当たりばったり的だったのである.
その反省から今年に開発する企画書を11月のうちにしっかりと決め,12月には本格的な開発に入っている…はずだったのだが,どうにもうまくいかない.今回はそんな経緯についてのお話だ.

11/15~11/17

さて,事の発端は企画書のコンペティションである.コンペティションに応募があった企画書は四つ.

  • 「Ninth Soul」 - デジタル恐山を舞台にした王道ローグライク×アクションアドベンチャー
  • 「Wired Planet」 - 惑星模型が重力を発生させる不思議なモールを舞台にしたワイヤーアクション
  • 「(名称未定)」 - 調律師が「音の芽」を育成し,カードバトルでノイズを調律する
  • 「admin_operate」 - プレイヤーがOSになり,応用アプリケーションと交流するパズルゲーム
    せっかくなので,それぞれの企画書を解剖してみよう.

Ninth Soul

私が企画書を書いた,有名どころで言うとMinecraft Dungeonsなどのゲーム性が近い3ライフ制のローグライトゲームである.
このゲームの最大の特徴は,なんといっても武器が「ゲームキューブ」ということだろう.角で殴ってよし,ディスクを飛ばして遠距離攻撃してよし.敵が落とすディスクを交換すれば攻撃力・防御力が変化する.…とはいえ,実のところを言うと,ゲーム性にこれ以上に独特な要素はないのだ.
代わりと言っては何だが,キャラクターはかなりよくできたと思っている.ここでは私のお気に入りのキャラクターを一体紹介しておこう.

ETHAN
「私のDOSの効いた声で全員黙らせてやりましょう」
スマートウォッチの付喪神.青画面に:)という縦顔文字で,スマートウォッチの割には中で動いているシステムがレガシーな描写がある.寒いコンピュータジョークが特徴.

キノコフNinth Soul企画書-

Wired Planet

これまた私が企画書を書いた,地球の重力と惑星模型の重力がせめぎ合う寂れたモールを,置いて行かれた人形がワイヤーアクションで攻略するという趣旨のゲームだ.
ステージの上空に浮いている「空に帰りたがっている小さな星」を集め,天井の穴から脱出する…という目的設定なのだが,ステージの上空に浮いている「空に帰りたがっている小さな星」を集め,天井の穴から脱出する…といった具合にかなりファンタジックな設定になっている.
この企画書の強みはなんと言ってもコンセプトとゲーム性がしっかりしており,ストーリーがほぼ無く,目的設定とゲーム内の目的が強固に結びついていることである.
とはいえ弱みもあって,まず物理演算だ.二重重力まではまあ簡単なのだが,回転を考え始めるとかなり頭がごちゃついてくる,Y軸だけをアブストラクトに保持し,今居る重力圏ごとに実際の回転方向を生成する…などだろうか.

(名称未定)

9rammeが書いた今回のコンペティションの優勝作品だ.なぜこれで作り始めないのかは後述する.
主人公は調律師で,ある時調音の女神という神に音と記憶が結びついた世界「アルモニカ」へと召喚された.彼女に"音の芽"と呼ばれる精霊のようなものを託され,ノイズに侵食されて消えゆくこの世界の記憶を救ってもらいたいと頼まれる…といった具合だ.
ゲーム性を見ていこう.このゲームのゲーム性は一言で言えばステージ選択制カードゲームRPGだ.「短期調律フェーズ」で相対する敵に合わせて攻撃力や防御力などに与えられたポイントを割り振り,"調律"してから戦闘開始.カードバトル終了後に報酬をゲット,デッキを強化できる.

admin_operate

プレイヤーがOSになる、,たしかにそう書いてあった,このゲームのゲーム性としては,おそらくギャルゲー×アルゴリズムパズルゲームといったところだろうか.
作者のtoraによればどうやら半分書きかけのようなので推論形式にはなるが,メインループとしては擬人化された応用ソフトウエアから降ってきた無茶振りをアルゴリズムパズルで解くといった感じになるだろう.

11/18~11/28

なぜダメったのか?

さて,どれもこれも個性豊かなメンバーである.では本題.なぜ名称未定で開発が始まらないのかという話だ.結論から言うと,私がごねた.
9rammeの名誉のために言っておくと,調律師という職業と短期的なステータス調整というシステムを調律のアナロジーで繋げるアプローチは面白いと思うし,世界観設定はメンバーからも評価が高かった.これからの話はゲーム性への批判ではなく,スコープに問題があるという話だということを念頭に置いて読んでほしい.
というのもこのゲーム,変数が多すぎるのである.カードバトルのバランス調整はアクションと違って見て分かるものでもないし,そこに調律が入ると検証しなければならないパターンは天文学的に増大する.
バランス調整だけではない.実行順によるバグ,シナジーによるバグ,矛盾する命令…とうてい1インディーゲームスタジオにどうにかできるものではない.
さらに言えば,致命的な問題として,このゲームスタジオにはイラストレーターがいない.軽く見積もっても50枚は必要なカードのイラストは誰が描くのだろうか?(これは全企画に共通の問題でもある.Nano Banana Proに頼るのも限度があるだろう)
ストーリーがあるならば,ストーリー変更時のリテイクコストは?不安要素が多すぎたのである.心苦しいが、これは言わねばなるまい.「完成しない」と.

どう解決しようとしているのか

その旨を本人とメンバーに話すと,「ゲームシステムとストーリーは仮置きのもので,変えても問題はない」とのことで,他のメンバーもどちらかというと世界観設定のほうに魅力を感じているようだった.
そこで,試しにこんなゲームシステムを考えてみた.ノーツを一定数しばいたらサンプルが十分になったので調律できる…といった設定だ.

  • アイテム、身構える(被ダメージ軽減)、構える(与ダメージ増加)を選択
  • ターンの初めに敵n体に向けてレーンを引っ張って繋げる → リスクとリターンを自分で選択できる
  • レーンに音ゲーのノーツが流れてくるので叩く。当てると敵にダメージ、外すと自分にダメージ
    Undertale/Deltaruneの弾幕要素を音ゲーに置き換えたといった具合である.とはいえ,これも採用するかは未定の状態なのだが.

再発防止

とはいえ,ダメ出しをしておいて具体的なレッドラインを設定しないのは無責任だ.そこで,企画書を書くときに気を付けるべきガイドラインを書いてみることにした.名称未定はこのガイドラインにおいては,「想定プレイ時間は?」「やらないことリストは?」あたりの話が該当するだろうか.

ジャンルは何系か,どこが独自なのか

ジャンルに囚われない,は実は思ってるより難しくて,経験上何にもなれない形無しの宙ぶらりんになることが多い.だからジャンルとリファレンスになるゲームを決めて,そこに独自性の根っこになる強烈な一個の独自性を加える形がいろんなゲームを見てきた中で一番納まりがよくなる.ここで重要なのが独自性は多ければ多いほうがいいってわけじゃないこと.低レベルなところで独自性を出すな.一言で伝わるか?も重要.

だれが,いつやるのか

何を好むどんな人が,いつ,なぜやるのか.他の娯楽と比較してなにがこのゲームを選ばせるのか.

画面を列挙する

どんな画面が何個あって,何ができて,なんで必要で,何が必要なのかを必要なすべての画面について列挙する.余裕があるならどれくらい必要かも書いたほうがいい.開発が詰まったときにそこを切れるかの判断材料になる.

想定プレイ時間は?

企画書書いてるときってテンション上がって何十時間も遊べるようなものを想定しがちだけど,最高でも5時間くらいを想定したほうがロードマップが想像しやすい.スコープを考えるうえで,着手から完成まで何をすべきかが見えるか?はかなりわかりやすい指標.そもそも,審査員は数十時間も遊んでくれない.短時間の一周でゲームの魅力を伝えきれるようにすべき.

コアのゲームループは何か?

ストーリを全部取っ払って,キャラクターを豆腐にして,UIをエンジンの標準スタイルにしてもそのゲームは面白いのか?という話.このゲームの骨格がしっかりしてないと無理やり肉を載せても成立しない.どことどこにリスクとリターンの関係性があって,どんな時にプレイヤーは快感を感じるのか?

やらないことリストは?

ストーリーは切る,マルチプレイは切る,そもそもサーバーが必要な機能はぜんぶ切る,など最初に何を切るかは決めたほうがいい.この機能は開発が○か月になっても完成していなければ切る,などのセミやらないことリストも作ったほうがよい.

ストアページをイメージする

完成した後,一枚でどんなゲームで,どんな要素が面白いのかを一枚で伝えられるスクリーンショットをイメージして,丸を書いてその中に「ここに○○」「ここで○○が○○している」レベルでもいいのでアウトプットしてみる.

最初のステージクリアをイメージする

誰が,どうプレイヤーに操作を教え,何を動機に進んで,最初のステージをクリアするまでにどうコンセプトを理解させるのか.もっと言えば,最初の五分で捨てられないようにするプランはあるのか?

まとめ

さて,ここまで長々と話しておいて肝心の進捗なのだが…そう,結局,企画書は決まっていない.とはいえ,こうしてまとめて文章化したことでメンバー全員が状況を理解し,議論が進む可能性も無きにしも非ずだ.ひとまず,それを期待して今週のゆるノン日記を締めることとする.

カスのTIPS

このブログの名前はめでたくゆるノン日記に決定したわけだが,せっかくなので惜しくも一次投票で同率を獲った案を紹介しておこう.

Xe-Lab.

無難.とはいえ,だいぶ研究開発の性質が強いので正確ではある.

XOブログ

読み方は「くそぶろぐ」である.私の案だったのだが,私が辞退したことで消滅した.私だって面接の時に「クソブログの更新担当でした」って言いたくないよ.